平成27年度 東京大学大学院数理科学研究科修士課程入試[専門科目A]第1問

2014年9月1日(月)に行われた東大数理の大学院入試問題のうち、専門科目A第1問の解説をしていきます。

問題とコメント

線型代数の問題です。 理系の大学1,2年生に広く読まれる名著である線型代数入門の章でいうと第2章から第5章までにわたる幅広い知識を万遍なく問われており、盛りだくさんという印象です。

答案をどこまで詳細に書くべきか、判断の難しいところもありますが、基本的に「作問者が最も聞きたがっている知識」を見極め、その部分については一切の省略をせずに書くべきでしょう。逆に単純な式変形や、問題の本筋からするとあまりにも些末な部分は一旦「明らかに」と書いて、時間が余ったときに戻ってきて証明を付せば良いように思います。翌日に口頭試問も控えていますので、採点官に「この部分を詳細に証明してください」と言われた時に詰まらず答えられるのであれば、多少「明らかに」を使用しても良いと、個人的には思います。

(1)解答

線型写像の定義、また線型写像の中でも特に線型「変換」であるとはどういうことかについて、知っているか知らないかを問われています。この部分について「知っています」と伝わるに十分な証明を書くと良いでしょう。

(2)解答

表現行列の定義について、知っているか知らないかを問われています。基底をなしている元たちを順に写していけば良いだけですから、是非正解したい問題です。余計なことを書かなければall or nothingで採点されるタイプの問題ではないかと推察されます。

(3)解答

このあたりから、論証が必要になってきます。冒頭の「Tの階数を求めよ」という物凄く簡単な問題は、後半の問題のヒントになっているということを見極めましょう。

ありがちな議論不十分回答として「kerTに含まれる線型独立な元を、求められるだけ求める」というものが考えられます。しかしそれでは、kerTの部分空間の例を一つ挙げただけに過ぎません。本問では、まずTの階数からkerTの次元を確定させ、次にその次元ぶんの線型独立な元を求めてくる、というのが正しい順序の解答となります。

kerTの元は、(2)で求めた表現行列を眺めれば簡単に見つけられるでしょう。

(4)解答

行列の成分に0が多いおかげで、固有多項式は暗算でも計算できてしまうくらい簡単に求まります。従って「答えはこれかな?」というアタリはつくのですが、本問は答えが合っているだけでは点数は殆どもらえないでしょう。(3)の結果なども利用して、固有空間の次元について論じなければなりません。「対角化可能条件を理解していますよ」ということが採点者に伝わるような証明を目指しましょう。


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