2012年度 金沢医科大学医学部 第3問

60分で5題出題される大問のうちの1問です。
従って、長くても12分以内での完答が望まれます。

しかしながら、うまく解けば、 暗算で30秒程度 で答えを導くことができます。

模範解答

まずは普通の解答から見ていきましょう。

普通に積分していって、最終的には有名な公式である sin(x)/x→1 (as x→0)と、よく使う評価である sin(x)/x→0 (as x→∞)を使って極限値を求めました。

ただ、積分計算って、面倒臭いし、計算間違いも多発しやすいものです。
そこで、できる限り計算を避けたやり方を考えてみましょう。

x→0の極限についての別解

微分係数の定義と、 微積分学の基本定理により、 (1+2×1)^2という暗算のみで答えを導くことができます。

x→∞の極限についての吟味

f(x)/xの分子のf(x)は、s=(1+2cos5t)^2とt軸、s軸、t=xで囲まれた部分の面積、 と理解することができますね。 この「面積」という視点で見ると、 分母のxは、「横の長さx,縦の長さ1の長方形の面積 であると、(多少強引ですが)解釈することができます。 つまりf(x)/xとは、以下の図の二つの面積の比を表しているということができます。

ここで、f(x)について、もう少し詳しく見ていきましょう。

被積分関数の(1+2cos5t)^2は、展開して整理すると 3+(周期関数) と見ることができます。 周期関数の部分は、1周期で積分すると積分値は0になりますね。 それって何を言っているかと言うと、1つの周期に注目した場合、 f(x)が表す面積は、横x, 縦3の長方形の面積に等しい ということになります。 もう少しイメージでお話しすると、s=(1+2cos5t)^2というカーブで波打っている波が 全て凪いだとき、深さは3になるということです。(以下図参照)

以上から、この問題は結局、 横の長さが同じで、縦の長さがそれぞれ3, 1の長方形の面積の比 を求めさせていることになります。そんなの、当然3ですよね。

xが周期の倍数以外のところで切ると、f(x)の面積が縦3の長方形に平均化されず、 値が3から少しずれてしまうのですが、x→∞にしていくうちに、 その差が全体の結果に及ぼす影響は、非常に些末まものになっていきます。

ということで、慣れてくると、 (1+2cos5t)^2を展開して定数項を求めるだけで、答えがわかります

巷でよく言われているように、一般に私立医学部の問題は、 レベルは標準的ですが、時間が非常にタイトです。 従って、教科書レベルのことができるようになったら、次は、 いかに短時間で解けるかということに焦点をあてた勉強が必要です。 そのためには、今回のように一つの問題に対して複数の解き方を考えたり、 「これって結局何をさせられているんだろう」と、問題の背景を探ることで、 次回以降、似たような問題を解くスピードを高めていくことが肝要です。

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東大数学科卒の家庭教師による、問題へのアプローチ
   
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